頭痛

病態・薬物治療

頭痛の分類

一次性頭痛

 慢性的で繰り返す頭痛であり、頭痛の90%を占める。他に基礎疾患はなく、画像診断やバイオマーカーによる診断は難しい。
 例) 片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛

二次性頭痛

 何らかの疾患によって生じる頭痛。原因疾患を治療することで、改善する。急性であり、直接生命に関わる可能性がある。二次性頭痛のうち、重大な頭蓋内病変は1%未満。
 例) くも膜下出血、脳腫瘍、髄膜炎

その他

 神経痛や顔面痛など。

診断

 問診や画像検査などにより、危険な頭痛(くも膜下出血や髄膜炎など、緊急性が高い二次性頭痛)であるかを判断する。
→ 一次性頭痛の疑いがある場合:丁寧な問診を行う。
  二次性頭痛の疑いがある場合:さらに検査を行い、原因疾患を鑑別する。既往歴や服薬歴も考慮する。

疾患の概要

一次性頭痛

片頭痛

【ポイント】
拍動性
・男比 1:4
・前兆を伴う場合がある(約30%)
 :視覚症状(閃輝せんき暗点、視野欠損)、言語症状(失語状態)、感覚症状(ピリピリする) など
・月:1~5回
・1回の持続時間:4~72時間
・随伴症状:「悪心 or (and) 嘔吐」or (and) 「光過敏 or (and) 音過敏

 片頭痛は、ストレスや環境の変化、赤ワインやチーズの摂取などによって誘発される。
 また、入浴等によって増悪し(血管が拡張するため)、十分な睡眠等によって軽快する(血管が収縮するため)。

【発生機序】
 片頭痛の発生機序として、2つの説が考えられている。(①三叉神経説 ②血管説)

①三叉神経説
 三叉神経は、末梢神経系の第5(V)脳神経である。3つに分枝しており、顔の感覚を脳に伝える。

 まず、誘引刺激(音、光、臭いなど)によって、三叉神経から血管作動性物質(サブスタンスP、CGRP:カルシトニン遺伝子関連ペプチド)が放出される。
 それにより、三叉神経によって取り囲まれている脳血管は拡張し、血管透過性が亢進するため、血漿蛋白が漏出する。また、血管周辺に存在する肥満細胞が脱顆粒し、ヒスタミンなどを放出する。
 その結果、三叉神経は神経原性炎症を生じ、炎症は末梢へと伝わる。それによる痛みシグナルは、三叉神経節・三叉神経核を通じて中枢へと伝達され、大脳皮質へ伝わり、痛みとして感じられるようになる。

②血管説
 ストレスなどにより、血小板からセロトニン(5-HT)が過剰に放出されることで、脳血管が一時的に収縮する。
 次第に、セロトニンはモノアミンオキシダーゼ(MAO)によって代謝されるため、血管内のセロトニン濃度が低下し、血管が拡張する。
 その結果、血管透過性が亢進して血管浮腫が生じるため、三叉神経が刺激されて痛みが生じる。

【治療】
●非薬物療法
 ・急性期 : 増悪因子を避けて、安静にする。
 ・非発作時(予防) : 頭痛体操、理学療法(鍼など)、認知行動療法、サプリメントの摂取

●薬物療法
・発作時
  軽度 : NSAIDs → トリプタン製剤(NSAIDsが無効であった場合)
  中等度~重度 : トリプタミン
          → トリプタン製剤とNSAIDsの併用(トリプタミン単独が無効であった場合)
・非発作時(予防)
  抗てんかん薬(バルプロ酸ナトリウム)、抗うつ薬(アミトリプチリン)、Ca拮抗薬(ロメリジン)、な  どを投与。

緊張型頭痛

【ポイント】
非拍動性(圧迫感、締めつけ感)
・どちらかというと、女性に多い
・頻度:約22%(一次性頭痛で最多)
・年:数回~毎日
・部位:頭蓋周囲~後頭部
・両側性
・日常動作(階段の上り下りなど)によって悪化することはない

【治療】
●非薬物療法
 入浴、飲酒(少量) ← 血管を拡張させる。
 理学療法(鍼など)、認知行動療法

●薬物療法
・急性期 : NSAIDs(、アセトアミノフェン)
・非発作時(予防) : 抗不安薬、抗うつ薬、筋弛緩薬

群発頭痛

【ポイント】
女比 5:1
・年:約1回の群発期(約1ヶ月間)
・1回の持続時間:1~2時間
深夜に生じやすい
・部位:片側の眼窩部・側頭部
眼球をえぐられるような痛み
・随伴症状:自律神経症状(結膜充血・流涙、鼻閉・鼻漏、縮瞳・眼瞼下垂(ホルネル症候群))

【治療】
●非薬物療法
 急性期 : 酸素吸入(在宅で可能)

●薬物療法
・急性期 : スマトリプタン皮下注
・非発作時(予防) : ベラパミル(Ca拮抗薬)

二次性頭痛

くも膜下出血

 脳動脈瘤の破裂が原因であることが多く、くも膜下腔に出血して、頭蓋内圧が亢進する。

【ポイント】
・突発的な頭痛(1~3分がピーク)
ハンマーで殴られたような痛み
女性に多い
・1/3ルール(発症した 1/3は死亡、1/3は重い後遺症、1/3は社会復帰)
・随伴症状:悪心・嘔吐、意識障害、髄膜刺激症状(項部硬直、Kernig徴候)

脳腫瘍

【ポイント】
・非拍動性
・進行性(突発性ではなく、徐々に痛みが生じる)
起床時に生じやすい
・随伴症状:悪心・嘔吐、意識障害、うっ血乳頭、人格の変化

髄膜炎

 細菌やウイルスなどの感染や、薬剤などにより、髄膜に炎症が生じる。

【ポイント】
・拍動性
・初期症状は風邪と似ている
・3主徴:発熱意識障害項部硬直

薬物乱用頭痛

トリプタミンやNSAIDsなど、急性期・対症的治療薬を定期的に乱用することにより生じる、慢性的な頭痛。まずは、原因薬物を中止することが治療の原則。

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